自分を他人と比較することは、いいことなんでしょうか。

「他人と比較するな」といったアドバイスも出回っていますが、

幼少の頃から、天才の兄と比べられてきた自分としては、少し考えるところがあります。



例えば、SNSで「いいね」の数を競うように、
他人との優劣を比べることで、やる気を奮い立せることができるかもしれません。


しかし、優劣の比較ばかりでは、
いつか燃え尽きてしまい、結局、虚しさに覆われてしまうように思います。


だからといって、他人と比較を放棄することは、
人間社会に生きている以上は、難しいことでしょう。。



そこで、虚しさを生む比較の仕方を変えて、
より健やかさで満たされるよう仕向けられないものでしょうか。


書法道場では、「他人の書は最高のお手本」という前提で、
積極的に他人の書き方との比較を行います。


その際、まずは、優劣の評価を極力控え、
間違い探しゲームのように、事実として異なる箇所を探していきます。



そうやって書き味の違いを比べていると、
自分にはない「美」が他人の書から発見され、思わず、褒め言葉が、漏れ出てきます。


同時に、灯台下暗しだった自分の個性(クセ・偏り・過大・過少など)に気付くこともできます。
自分一人では、決して見えなかった「伸びしろ」が、他人との比較によって如実にあぶりだされていくのです。



 「羨む」のではなく「尊ぶ」。「妬む」のではなく「称える」。
「他人の書は最高のお手本」という比較の前提は、他人にも自分にも、自然な敬意を払うようにするものです。


この比較の前提が書道以外の日常に広がれば、
他人と比べる生きづらさが、健やかさを生み出すタネとなっていくのかもしれません。




                                                              書法道場師範 武田双鳳